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炉辺談話(329)

2006年国際協議会講演 3

会員増加とクラブ・リーダーシップ・プラン

PDG スティーブン・ウィルコックス

 

この度、講演者としてご招待いただくことができましたのも、過去25年以上にわたり、クラブや地区においてロータリアンとして、またロータリアンの指導者として培ってきた経験の結果だと信じております。この本会議の講演では、会員増加を支えるために充実したクラブを築くことについてお話をさせていただきます。
 クラブとは、皆さんのリーダーシップと指導を通じて空高く上がっていく風船のごときものです。効果的なリーダーシップは、風船が高く舞い上がるための条件を整えます。ここでは、皆さんが地区指導者としていかに率先され、クラブを新たなる高みに導いていくことができるかについて、いくつか例をご紹介させていただきます。

かつて、ポール・ハリスは次のように言いました。「ロータリー・クラブは、世界中にロータリーを繁栄させるための研究所および新しいアイデアの試験場としてその成果を実証してきました」彼はまた次のような言葉も残しています。「ロータリーとは、回顧主義の組織ではありません。過去の業績ではなく、むしろ将来の活動にその価値と目的を置いているのです」と。また、「私たちは有為転変の世の中に生きている以上、ロータリーも同様に変化する心構えが必要です」とも言っています。6080年前に記された未来に関するこれら3つの言葉は、地区ガバナー・エレクトである皆さんが創立第二世紀に当組織を導く準備を行っている今日においても、未だ真実です。

皆さん、同じことを繰り返しているだけでは、クラブで今までと違う結果を残すことは到底期待できません。15年前、私が会員数50名のハドソン・ロータリー・クラブの会長だった当時、私は、この小さな地域社会に新クラブ、ハドソン・デイブレーク・ロータリー・クラブを創設するという拡大活動を導いたことがあります。一部のロータリアンは、町に二つ目のクラブを作ることに反発しましたが、私たちの町には都会への通勤者が多く住んでいたため、新会員の勧誘を行うにあたって、例会時間を朝に設けることが重要なカギを握っていました。私は新しいハドソン・デイブレーク・ロータリー・クラブの会員となり、その10年後には会員数が60パーセント増え、わずか1年で会員65人から103人にまで増えるという快挙も成し遂げました。私のクラブは今も成長し続けています。

1年前、私のクラブでは、会員の平均年齢を下げ、多様性を広げることに重点的に取り組みました。私たちは「30歳以下を10人」というプログラムを立ち上げ、30歳以下の新会員を11人入会させました。年齢や性別、人種、民族的背景など、組織の中で周囲の人々と異なることは、孤立などの困難な状況に追いやられる場合があることを、私たちは皆知っています。私のクラブもこのことを承知していましたが、同じ若い年齢層の人々を少なくとも一度に10人入会させることによって、新会員が孤立することなく、よりスムーズにクラブに溶け込めるよう援助することができたのです。今では、新しく芽生えたクラブの若い男女の文化が、ロータリーの奉仕の新世紀へと私たちを導いてくれています。これは、古いやり方に変化を加えることによって、いかに会員を増やすことができるかの、ほんの一例にすぎません。
 ロータリーでは、毎年大勢の会員が退会しています。地区は、どうすれば会員維持率を高めることができるでしょうか。

  1.       まず、クラブが将来の計画を立て、全会員にこれを理解してもらいます。
2.       リーダーシップも重要な鍵となります。クラブは、計画的に考え、進むべき方向を見定めることのできる熱心なリーダーを必要としています。
3.       参加もまた重要な要素です。すべての会員が参加する機会を持つようにしてください。
4.       適切なオリエンテーションを通じて会員の知識を深めることも、退会防止につながります。自分が所属する組織について理解してはじめて、自分がいかに貢献しているかを実感することができるのです。
5.       そして最後に、コミュニケーション(意思疎通)があります。会員の一人一人がクラブの方針を把握し、指導者が誰であるかを認識し、組織を理解し、ロータリーに熱心に参加するだけの強い信念を備えるようにしてください。

皆さん、以上は、さほど複雑なリストではありません。地区においてこれらの信念を支えていくことによって、地区指導者となる皆さんは率先していくことができるのです。
 高く舞い上がる風船のようにクラブが膨らんでいくためには、私たちの生きるこの時世にふさわしい考えを支持しなければなりません。RIの会員増強部が行った調査では、クラブの指導力の弱さが、退会の主な理由であることが判明しています。RI理事会は、地区リーダーシップ・プランのしかるべき次段階として、クラブ・リーダーシップ・プランを承認しました。

クラブ・リーダーシップ・プランは、世界中のロータリー・クラブにおいて過去5年間にわたって試行されたクラブの推奨管理構成です。これは、効果的なロータリー・クラブのベスト・プラクティス(最善の実践方法)に基づいたものです。それぞれのロータリー・クラブは独自の存在であるため、クラブ・リーダーシップ・プランは、世界中のクラブの個々のニーズを支えるに十分な柔軟性を備えています。クラブ・リーダーシップ・プランの採用はクラブに義務づけられているものではありませんが、新クラブも歴史あるクラブも、すべてのロータリー・クラブにとってこのプランは有用です。

  ・     効果的なクラブの要素に取り組む長期目標を立案する。
     長期目標を支える年次目標を設定する。
     クラブ会員全員が最新情報を得ていること、クラブに参加していることを実感できるようにする。
     クラブ内ならびに地区との意思疎通(情報伝達)を円滑に図る。
     年度から年度への指導力の継続性を保つ。
     クラブの運営を反映させて細則を独自に修正する。
     定期的な親睦の機会を提供する。
     すべてのクラブ会員を活発に参加させる。
     定期的かつ首尾一貫した研修を提供する。

クラブ・リーダーシップ・プランは、以下の事実に焦点を当てて立案されました。

  ・     ロータリアンはボランティアであり、多忙な人々が多い。
     ロータリー・クラブの指導者は毎年交代する
     効果的なクラブには、継続性を支える運営手続きが必要である。
     クラブ・リーダーシップ・プランの目的は、効果的なクラブの管理の枠組みを提供することにより、クラブのレベルでロータリーの充実を図ることです。効果的なクラブとは、会員を維持、増加し、成果溢れる奉仕プロジェクトを実施し、ロータリー財団を支え、クラブの枠を超えた指導者を育成することができるクラブです。

クラブ・リーダーシップ・プランは、どのような規模のクラブの管理にも適用できるベスト・プラクティスのアプローチです。どのクラブも、クラブの状況に最善に対応するプランを独自に作り出すために、リーダーシップ・プランの要素を採り入れることができます。このプランを既に試行したクラブの声をいくつかご紹介いたしましょう。

まずは、カナダのバンクーバー・ザンライズ・クラブ。「この新たな構成を採用する機会を与えてくれたことに感謝しています。これによって、固定観念にとらわれずに自由に考えることができ、改革と抜本的な大整理を行うことでクラブは再び活力を取り戻すことができました」
 さらに、イタリアのミラノ・ノルド・ロータリー・クラブからは次のようなコメントが寄せられています。「クラブ・リーダーシップ・プランは、ロータリー・クラブの能率をさらに高めてくれます。今まで組織力が弱かったクラブにとっては特に願ったりのプランと言えます」
 最後に、オーストラリアのパズトウ・ロータリー・クラブの会員の言葉をご紹介します。「私たちは、クラブ・リーダーシップ・プランの施行によって、ただでさえ多忙な会員たちにさらに多くの仕事を課すことになるのではないかと心配していましたが、それはまったくの取り越し苦労でした。プラン施行の責務は大勢の会員の間で分担されることにより、新会員にとってもすぐにクラブの業務に従事することができるという利点を悟りました。今ではその恩恵を実感することができます」

これらの証言が示すように、クラブ・リーダーシップ・プランは、クラブのさまざまな運営方法を表しています。2006-07年度のガバナーとして、皆さんは、地区でこのプランの活用を推進するために、プランをよく理解し、それがクラブをどのように充実させるのかを把握しておく必要があります。このプランでは、長期計画に取り組み、将来の構想を練ることがクラブに要されます。このような長期計画プロセスによって、クラブは、成長と発展に向けて一致団結して取り組み、苦境を克服して力強いクラブへと移り変わることができるのです。

私個人といたしましては、クラブ・リーダーシップ・プランのこの部分を強く確信しております。当地区では、3年前からロータリー・クラブのための長期計画を開始いたしました。「構想作りの進行役チーム」と我々が呼ぶ進行役のグループが、プレゼンテーションや演習、コンセンサス形成といった内容を盛り込んだ4時間ほどの討論会を進行しました。コンセンサス形成は、クラブの指導層が同じ志の下に目標や目的を目指すことができるようにするためのものでした。このクラブの構想づくりを進行いたしました結果、次のような成果がありました。

  ・     奉仕する地域社会におけるクラブの存在意義を明確に定義できたこと
     2010年のクラブ会員数目標
     今後にクラブが持つ性質・特質とはどのようなものかを特定できたこと
     各奉仕部門における優先目標上位3
     クラブの改善点の推奨

私は、12クラブの構想づくりプロセスを進行させていただきましたが、その中には、創立後8週間の新クラブ、解散寸前まで行きながら3年経った今では会員数が倍になった創立20年のクラブ、会員の考えや方向を調整する必要があった10番目に古いクラブなどが含まれていました。すべての事例において、計画のプロセスのおかげで、クラブの特質や地域社会での存在意義、今後の方向性が明確になりました。キャシー・スミス元地区ガバナーはおっしゃいます。「過去36カ月間に構想づくりの会合が行われた当地区の12のクラブでは、会員の退会が少なくなり、会員増加をもたらすクラブの方向性に関する明確なビジョンを持てるようになりました」

長期計画プロセスは、良い意味ですべての人々に恩恵をもたらします。しかし、このプロセスの推進者となるのは、地区ガバナー・エレクトである皆さんです。皆さんは率先しなければなりません。地区ガバナーとしての皆さんの役割は、長期計画の価値を認識し、クラブのためにクラブ・リーダーシップ・プランを検討するよう、クラブ会長の意識を喚起することです。

クラブ・リーダーシップ・プランにはいくつかの恩恵があります。

  ・     クラブの将来について、すべての会員に意見を述べるチャンスが与えられる。
     クラブ運営を簡素化することによって、奉仕と親睦に集中するためのより多くの時間を会員に与える。
     クラブ会員がより一層関与することによって、将来のクラブ発展につながり、地区指導者が育成される。
     クラブ活動に会員がより多く参加するにつれ、会員保持率が高くなり、退会防止につながる。
     クラブ指導者は、クラブ目標を達成するためにより多くの会員の協力を得ることができる。
     任命とクラブ目標の間に継続性を持たせることによって、リーダーの引き継ぎが容易になる。
     クラブの慣習を新鮮な目で見直すことによって、ロータリーへの熱意が新たになる。

クラブ・リーダーシップ・プランは、クラブの年次目標を実現するために、5つの常任委員会を任命することを推奨しています。すなわち、クラブ管理運営、クラブ広報、会員増強・退会防止、奉仕プロジェクト、ロータリー財団です。

皆さんはそれぞれ、本日の研修セッションでのクラブ・リーダーシップ・プランに関する話し合いで、さらに多くを学ばれることと存じます。研修リーダーは、皆さんがプランの導入に対する熱意とリーダーシップを備えて地区にお戻りになることができるよう、プランの要素について一つ一つ取り上げていきます。

クラブのリーダーシップが活力と積極性と意欲に満ちたまとまりのあるものであれば、会員の維持率は高く、クラブは健全さを保つことができると実証されています。一方、クラブのリーダーシップが活力と積極性と意欲に欠けたまとまりのつかないものでなければ、会員の維持率に問題が生じることになります。

私たちの組織では、地元社会や世界中の地域社会における奉仕のニーズを満たしていくために、会員の退会防止と増加という観点から考えていかなければなりません。皆さんの年度の会長となるビル・ボイド会長エレクトは、次年度に、1クラブにつき1人の会員の純増を目標として定められました。皆さん、これは、目標が成功すれば、32,000人以上の新会員が生まれ出る計算になります。

19162月、ポール・ハリスは言いました。「単なる登山者ではなく、建設者でありたいと思います」と。その90年後にビル・ボイド会長エレクトは、「率先しよう」とロータリアンに求めておられます。本協議会中に受け取られる資料や学ばれる知識を生かしながら、前進し、「建設者」となり、率先して、次なる段階へとクラブを導く時がいよいよやって来たのです。今、その好機をつかもうではありませんか。 


2006年3月13日