脊椎管狭窄 2
人間の背骨(脊椎)は、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎からなっており、それぞれの脊椎の後側には脊椎管という穴が開いており、その穴の中を神経の束や血管が通っています。腰部脊椎管狭窄というのは、腰椎の脊椎管が狭くなるために、狭くなった部分で神経や血管が圧迫されて、運動障害や循環障害が起こってくる病気です。原因はいろいろとあるようですが、座ったままの姿勢で長時間の作業をしたり、加齢現象によって起こると言われています。ひょっとしたら、毎日長時間座りっぱなしで「ロータリーの源流」を書いていたのが原因かも知れません !!!
この病気の特徴は、歩行によって、脊椎管が細くなっている場所の神経や血管が締め付けられて、足腰が動かなくなることです。私の場合は、前かがみになってする作業、すなわちパワーポイントを使って講演をする作業や、コンピューターの作業は何時間でも可能なのに、歩くのは30メーターが限界という状態でした。ただし、2、3分、腰を下ろして休むと再び、同じ距離が歩けます。自転車に乗ったり、量販店などに行ってカートを押して歩く分には何の支障もありません。すなわち、前かがみの姿勢ならば正常通りの生活ができるのが特徴です。よく腰をかがめて手押車を押している老婆を見かけますが、本人が自覚しているか否かは別にして、まさしくこれが腰部脊椎管狭窄を患っている人の典型的な姿勢です。
みのもんた氏のケースでは、立っているのも困難な病状だったらしく、公開されたMRIの画像も典型的な腰部脊椎管狭窄の所見でしたので、術後は劇的な症状改善が見られた模様ですが、私の場合にはMRIもCTも所見に乏しく、ミエログラフ(脊髄造影)に僅かに狭窄が見られる状態だったので、手術の成功率は五分五分といったところでした。しかし、このまま経過観察をしても何らの症状改善が見られず、返って悪くなる一方なので、一縷の望みを賭けて手術に踏み切ったわけです。
手術は簡単で、狭くなっている部分の脊椎の後側の骨(椎弓)を切り取って(開窓術)、脊椎管を広げます。と言うことで、私の同級生の整形外科医の紹介によって、K病院で手術を受けることになりました。
全身麻酔下の手術は何の記憶も痛みもなく、いつ始まっていつ終わったかは、本人には判りません。手術自身は成功したのですが、脊髄硬膜に穴が開いて、そこから脊髄液が漏れるという想定外の合併症が起こりました。手術後に、背中の傷口に差し込まれているドレイン(体液の排出チューブ)から止めどなく脊髄液が流れだしたために、脳圧が下がってしまって、激しい頭痛と吐き気に悩まされました。大量の点滴や水分摂取も何の効果もありません。取り敢えずドレインを抜いて、傷を縫い合わせて、脊髄液の流失を止めたので、頭痛と吐き気は治まりましたが、今度は、行き場を失って皮下に溜まった脊髄液が脊髄や神経根を圧迫して、強烈な神経痛とこぶらがえりの症状が起こってきました。
注射器で脊髄液を抜いて圧力を減らせば、その症状は治まるのですが、翌日にはまた脊髄液が溜まって同じ症状の繰り返しです。自然に穴が塞がるのを待つのが一般的だとのことですが、連日連夜続く激しい痛みに耐え切れず、また再三、脊髄液を抜いて、そのためにもし感染症でも起こしたら一巻の終わりなので、再手術に踏み切ることになりました。
再び、全身麻酔下で、針の先ほどの硬膜の穴を塞いで、フィブリン糊を注入して、絶対に脊髄液が漏れないように防水加工をしてもらいました。再手術後3日目には嘘のように痛みが治まって、走行距離も徐々に伸びて100メーター以上も歩けるようになりました。毎日順調に歩行距離も伸びていますし、傷口もきれいに直ってきましたので、1ケ月続いた病院生活からも、今週末には開放されそうです。
第一線に復帰して、再び皆様方とロータリーを語れる日が近づいたことを心から感謝しています。