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炉辺談話(63)

1915年に制定され、1916年の大会でガイ・ガンディカーによって「ロータリー通解」として参加者全員に配られて、職業奉仕の集大成とさえいわれた「道徳律」は、その後、その中に言及されている「黄金律」を巡って、特定の宗教に偏っているという批判が続出し、最終的にあらゆるロータリーの規約や文書の中から姿を消してしまいました。
 ロータリーの職業奉仕理念が希薄になってしまった今日、この「道徳律」の背後に潜むロータリーの奉仕理念を再考すればするほど、改めて先達の思考の素晴らしさに感動を覚えます。

ここで改めて、黄金律から引用された「すべて人にせられんと思うことは、他人にもその通りにせよ」という一節は、キリスト教のみに特有な戒律かどうかを調べてみると、世界中の様々な宗教や哲学的思考の中に同様な思考が数多くあることが分かります。

そこで、この黄金律の様々な表現例をご紹介してみたいと思います。

エジプト・・他人のために良かれと自らが望んだことを捜し求め、それをしてあげなさい
ペルシャ・・あなたが人からしてもらいたいことを、人にしてあげなさい
仏教・・他人の幸せを、自ら望んで捜し求めなさい
儒教・・あなた自身が望まないことを、他人にしてはならない
イスラム教・・あなたがしてもらいたくないような方法で、あなたの兄弟たちを扱ってはならない
ギリシャ・・隣人から敵意を抱かせるようなことをしてはならない
ローマ・・すべての人が心に刻み込んでおかなければならない法律とは、あなた自身の社会の人たちを愛することである
ユダヤ教・・あなたが隣人からしてもらいたくないことを、隣人にしてはならない
キリスト教・・すべて人にせられんと思うことは、他人にもその通りにせよ

 このように、黄金律はすべての宗教や哲学的思考の中で、ほぼ同じ表現で述べられており、例え、宗教と奉仕哲学との差があったとしても、隣人に対して己を捧げることが道徳上の義務であり、人生のすべての部門でそれを適用することを説いた、ロータリーの奉仕理念と合致することは間違いないと思います。