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炉辺談話(64)

IT革命とロータリー

ITがInformation Technologyの略語だということを知らなかったどこかの国の総理大臣が、IT革命のことをイット革命と発音して失笑を駆ったのはつい先日のことでしたが、最近では烏の鳴かない日があってもITの文字を目にしない日は無いほどのポピュラーな言葉になってしまいました。

子供の遊び、若い人の一時的な流行だと考えて、あえてそんなものには迎合しないことを心に決めてきたeメールやインターネットが、何時の間にか市民権を得たばかりではなく、事業や日常生活、さらにはロータリーの世界までもの、標準的な通信手段に成長してしまったことに対するとまどいは、極めて大きいようです。
 特にロータリーでは、ロータリーことなど全く判っていないはずの若い会員が自由にコンピューターを操って、どんどん新しい情報を得ているにも関わらず、ロータリーの全てを熟知していることを自他共に認めている日本の指導者の殆どが、これを操れないばかりに情報音痴になりつつあるという逆転現象が訪れていることもまた、事実です。

 しかし、これに反して、外国のロータリーの指導者たちは、抵抗無くITを駆使しているようです。
デブリン会長は20のタスクフォースを設けて、ゾーン・コーディネーターを任命しております。日本からはちょうど100名のゾーン・コーディネーターが任命されていますが、その中でメール・アドレスを持っている方は45名、持っていない方は55名となっており、所持率45%です。
 ゾーン・コーディネーターを委嘱された方々は、比較的若いパスト・ガバナーですので、メール・アドレスの所持率が45%となっていますが、パスト・ガバナー全体の所持率は恐らく20%以下ではないかと想像されます。なおその中の半数近くは、会社名義のアドレスであって、その操作は職員に任されているというのが現状ではないでしょうか。
 これに反して日本以外のゾーンでは、殆どのパスト・ガバナーがメール・アドレスを持っており、特に8(オーストラリア・NZ)、21、22、26、27、30、31(USA)ゾーンは全員が持っています。
 一般の会員のパソコン使用率も、2680地区では30%という数字がでていますが、この中でメールやインターネットを活用している会員の大部分は若い会員で、クラブの指導者層の利用率は、パスト・ガバナーより低いのではないかと推測されます。
外国では、一般会員の所持率も指導者層の所持率に準ずるものと推測されます。これが世界の現状です。

僅か一年前までは、RI理事会または事務局から発信された情報は、日本サービスセンターへ届けられ、ここで翻訳作業を経て、ガバナーに伝えられ、更にガバナーから直接文書や月信でクラブ会長に伝えられ、さらにそれが会員に伝えられていました。
 この複雑な過程を踏むために、末端の会員まで情報が達するのは1・2ケ月かかり、「ロータリーの友」を通じて情報を得ようと思えば、3ケ月以上を要しました。そして、この過程を踏む情報伝達は、いわば上意下達ですから、一般会員よりも指導者の方が先に、かつ詳しい情報を知り得ることが可能でした。

しかし、昨年7月、デブリン会長がエレクトに就任以来、積極的にIT革命に取り組んだ結果、この情報伝達ルートが徐々に変化し、更に今年の7月からは抜本的に変化してしまったのです。
 RIから発信される情報は、@RIのウエブ・サイト、Aデブリン会長のウエブ・サイト、Bメールによって、直接に会員に届けられます。メールだけは直接指導者に届けられますが、その内容は同時にウエブ・サイトでも公開されますから、パソコンを操る全ての会員は、直ちに全ての情報を知ることができます。
 従って常時eメールやインターネットにアクセスして、かつ英語が理解できない限り、パストガバナーといえども、迅速に情報が伝わらないということになります。

ロータリー理念の理解度、奉仕活動の実践、財団寄付、そのいずれをとっても、日本のロータリーのグレードは極めて高いと思います。しかし、これらの活動や提案を行う手段としてのITに関する関心が薄ければ、その情報を世界に発信することができません。
 従来の通信手段をとり続けるならば、時間の遅れというハンディを負いながら、情報を受け取ることはできたとしても、すばやく情報を発信することは不可能なのです。全ての情報がオン・デマンドで流れる中で、2ケ月遅れの情報に価値を見出す人は誰もいないのです。

ロータリーにおける情報伝達の世界のスタンダードが、インターネットやeメールに変わっているのに、日本のロータリー、特に指導者層がそれに対応できないのは、非常に寂しいことです。そうでなくても語学のハンディキャップで肩身の狭い思いをしている上に、情報のハンディキャップまで負うことはどうしても避けたいものです。