21世紀の杞憂..
21世紀のロータリーがどのような道を歩もうとしているのか気がかりでなりません。
法さえ犯さなければ、たとえどのような手段を使っても、大きな利潤を得たものが成功者として称えられる、資本主義の悪い面が隆盛を極めた20世紀の初頭に、これに倫理的な基準を設ける運動として、ロータリーの職業奉仕の概念が生まれました。
ロータリアンが真摯にこの理念を実践に移した結果、資本主義の自由競争の前提として、高い職業倫理と利潤の適正分配の精神を持つことこそ、自らの職業を隆盛に導く前提であることが一般社会に認知されると共に、ロータリアンの企業を繁栄させてきました。
第二次世界大戦を契機に、ロータリーの運動に「世界平和」の考え方が導入され、ロータリアンの強い影響力の下に、国連が生まれました。全世界のロータリアンの友情と理解を前提として、世界の平和を目指そうという国際奉仕の考え方です。
さらに1960年代から、世界社会奉仕WCSを中心とした国際ボランティアの活動が始まり、3-H、ポリオプラスと進展し、昨今では名実ともにボランティア団体と化した感があります。
ロータリーの思考には、He profits most who serves bestに基づく職業奉仕の理念と、Service above selfに基づく社会奉仕および国際奉仕のボランティアの理念があり、この両者を以ってロータリー哲学とすることが決議23-34に明記されています。
従って、ボランティア活動をすることがロータリーとして適切な活動であることには異をはさむつもりはありません。ただし、昨今のロータリーの活動(RIの考え方)は、職業奉仕を忘れ去って、ボランティア活動にのみに狂奔しているように思えてならないのです。
ボランティア活動に専念しようと思えば、大量のマン・パワーと資金が必要になってきます。
今、RIは2005年までに150万人の会員増強を考えています。これを容易にするために、このたびの規定審議会には、若くて忙しい世代の入会を容易にするために、会員資格の簡素化や一人一業種制度の撤廃や出席規定の緩和等の定款改正が提案されます。
年末には、デブリン会長を中心とした使節団が中国を訪問して、ロータリーへの加盟を要請しました。ロータリーの思考は資本主義を前提にしたものですから、社会主義とは相容れるものではありません。ソ連にしろ東欧にしろ社会主義が崩壊した後にロータリー・クラブが出来たのですから、中国が加盟することによってボランティア団体として必要なマン・パワーは獲得できたとしても、職業奉仕の思考を伝達することはとうてい不可能でしょう。
名誉会員の入会を積極的に進め、すでにテッド・ターナー(タイム・ワーナー社主、CNN副社長)やビル・ゲーツ・シニアなどを入会させ、さらに各国の有力者を入会させるように要請しています。テッドはつい先日、国連のアメリカ分担金3200万ドルを個人で肩代わりした大資産家です。国際的な富豪を入会させることによって、今後、多額な寄付が期待できるわけです。
他の奉仕団体との連携についても積極的に推し進め、グラスゴー大会では、シビタンやライオンズとの協力を発表しています。
その一方で、ロータリーのロータリーたる所以とも言える職業奉仕に関する関心が希薄になっていることは、RIの職業奉仕委員会が1947年に廃止され、40年後の1987年に再設置されたものの、「職業奉仕の実践はロータリアン個人とクラブの責務である」という理解に苦しむ声明を出した後、再び委員会は廃止され、現在に至っていることからも明白です。
RIには会員増強・拡大という任務がありますから、これを推し進めようとするのは当然ですが、奉仕理念を鼓吹する義務も併せ持っていることを忘れてはなりません。そしてその奉仕理念は職業奉仕を前提としていることは、ロータリーの綱領からも明らかです。
もしRIが、21世紀にロータリーが生き延びる道は、ボランティア団体に転換することだと考えているのなら、先ず世界中のロータリクラブのコンセンサスを得た上で、ロータリーの綱領を改正しなければなりません。
最近のRIの一連の動きをみていると、綱領を改正することなしに職業奉仕を捨てて、ボランティア団体に移行する道を強引に突き進んでいるように思えてならないのですが、皆さんはどうお考えでしょうか。ぜひ、ご意見をお聞かせください。
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