.
炉辺談話(79)

ロータリアンの職業倫理 


贈収賄や談合のニュースが毎日のようにマスコミを賑わしています。不祥事を起こした企業の当事者の名前を、全国ロータリークラブ会員名簿で発見するとき、ロータリー運動の無力さをしみじみ痛感するのは、私だけではないと思います。

ロータリーの究極の目的が職業倫理高揚にあることは、ロータリーの目的が端的に述べられている「ロータリーの綱領」の主文が、「有益な事業の基礎として奉仕の理念を鼓吹し」という文章に始まり、さらには付帯事項の説明のなかで、「事業および専門職種の道徳的水準を高めること。あらゆる有用な職業は尊重されるべきであるという認識を深めること。ロータリアン各自が業務を通じて社会に奉仕するためにその業務を品位あらしめること。」と書かれていることからも明らかです。
従って、これらの事件に関わった当事者を、会員からだすことは、ロータリー運動をロータリーの会員自らが否定することになります。

ロータリーの理念を否定してこれらの犯罪を犯すことによって、自らの企業を倒産させ、その結果として、ロータリーの職業奉仕理念の正当性を証明するのは、極めて情けないことではありませんか。

現在では、脱税、贈収賄、不公正取引、市場買占め、おとり商法、契約不履行、商標侵害等、そのほとんどが立法化されていますが、これらの不合理な商取引が公然とまかり通っていた時代に、これに敢然と立ち向かって、ついに立法化にまでこぎつけたのは、ロータリーの職業奉仕理念に従って、これを実践に移したロータリーの先達の努力の結果だということを忘れてはなりません。
 
しかし、いくら職業倫理が立法化されたとしても、それを守るのは人間であり、人間はえてして自分の都合のいい方に解釈するものです。従って毎週の例会を人生の道場と考えて、ロータリーの職業奉仕を学ぶ努力は未来永劫に必要なのです。
 
もし、彼らがロータリーの提唱する職業奉仕理念の片鱗でも理解していれば、こんな不祥事は起こさなかったはずです。
このような人に対しては、綱領違反によって即刻エンブレムを外していただくのは当然ですが、このような人を出したクラブは、教育的機能とロータリーに於ける真の親睦が欠如していたことを大いに反省する必要があります。
 クラブの評価は、どんな素晴らしい奉仕活動をしたかではなく、どんな素晴らしい人を育てたかによって決まるという言葉を、改めて思い起こす必要があります。