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炉辺談話(81)

ボランティア活動に関する新しい発想

 最近のRIのボランティア活動に対する取り組み方に疑問を抱く人が多いようです。その論点は、
1. 「ロータリーの綱領」からも職業奉仕を目的とした組織でであるにもかかわらず、職業奉仕を省みず、ボランティア活動に狂奔している。
2. 奉仕活動の実践はクラブの自由裁量件に委ねられているにもかかわらず、半ば強制的とも思われる手法で、奉仕活動や財団寄付が要請される。
と、いったことに集約されるのではないでしょうか。


1. ロータリーの目的が端的に述べられている「ロータリーの綱領」の主文には、「有益な事業の基礎として奉仕の理念を鼓吹し」と書かれており、さらには付帯事項の第2項の中で、「事業および専門職種の道徳的水準を高めること。あらゆる有用な職業は尊重されるべきであるという認識を深めること。ロータリアン各自が業務を通じて社会に奉仕するためにその業務を品位あらしめること。」と書かれています。
 社会奉仕に関しては、その第3項に「奉仕の理想を社会生活に適応する」と抽象的に述べられているだけですから、ロータリーの綱領から判断する限りでは、ロータリー運動は職業奉仕運動が主たる目的であることに疑問をはさむ余地はありません。

 その一方で、ロータリーには、アーサー・フレデリック・シェルドンが提唱した“He profits most who serves best”とベンジャミン・フランクリン・コリンズか提唱した“Service above self”の二つのモットーとがあり、前者は職業奉仕の理念であり、後者はボランティア活動の理念となっています。
 ロータリーではこの二つのモットーをロータリー哲学と位置付けていることは、決議23-34の第1条に「ロータリーは、基本的には、一つの人生哲学であり、それは利己的な欲求と義務およびこれに伴う他人のために奉仕したいという感情とのあいだに常に存在する矛盾を和らげようとするものである。この哲学は奉仕“Service above self”の哲学であり、“He profits most who serves best”という実践理論の原理に基づくものである。」と書かれていることからも明白です。

 当初は、職業奉仕の実践によって得られたプロフィットを原資として、個人奉仕としてボランティア活動を行うことが前提となっており、まず職業奉仕次いでボランティア活動という順位であったものが、1962年にWCSの考え方が導入されて以来、急速にボランティア活動に関するニーズが高まり、ついに、1990年の規定審議会で、Service above selfが第一モットーに昇格されて、He profits most who serves bestと立場を入れ変えるに至りました。それ以来、綱領上は職業奉仕団体を標榜しながら、現実には、ボランティア活動にシフトを替えるという矛盾を孕んだまま今日に至っているのが現実の姿です。
 従って、ロータリー活動を21世紀に向けて発展させるためには、ボランティア団体に移行する以外の道はないと考えるのならば、規定審議会に諮って綱領を変更することから始めなければなりません。
 現在のRIに対する不満は、その大切な問題を協議することなく、実質的にボランティア団体への移行を図っていることに対してではないでしょうか。

 さらに、綱領を遵守し、ロータリーの本質を変えずにボランティア活動を活発に行いたいと願うのならば(私はその立場ですが)、ロータリーの理念や規約と、ボランティア活動との間に整合性を持たせるような発想の転換が是非とも必要になってきます。


2. ボランティア活動に対するロータリアンの関心も高いし、国際社会からのニーズも高いことは事実です。そうかといって、現行の規約の下では、奉仕活動の実践母体ではないRIやその末端組織である地区が直接活動することは出来ませんし、クラブに命令することも自治権の侵害となって不可能です。
 RIがロータリークラブの上部機関だという考えは間違いであり、ロータリークラブ創立の歴史を紐解けば、それぞれのクラブは最高の自治権を持った対等の立場にあることが判ります。
RIはクラブの親睦を守るために後から作られた組織であって、当初与えられた役割は、奉仕理念の提唱と拡大であり、その後連絡調整権が与えられ、1922年になって、やっと直接監督権が与えられるという経過をたどっています。
 直接監督権の範疇にある定款・細則以外に、理事会の強い意思表示である理事会決議や理事会決定がありまが、これらの要請事項が、あたかも、クラブの行動を規制するかのような誤解を生んでいるのです。
 
 毎年、会長から発表されるRIのテーマ、会長賞への挑戦、数多くの奉仕活動に対する要望、ロータリー財団へ寄付、会員増強等が要請されますが、これらの殆どは理事会決定であり、それに従うか否かは、クラブの自由です。
奉仕活動の実践はクラブ自治権の範疇にあるわけですから、RIから示された奉仕活動の実践を拒否することはクラブの自由です。しかし、これらの要望事項は、全世界のニーズやロータリー活動を詳細に調査した結果、必要と認めて要望しているわけですから、自分のクラブの活動にふさわしくないとして採用しないのならば、自分のクラブにふさわしい活動を新たに見つけて、それを実施する義務があるのです。
 RIからの要請は断る。クラブ・レベルの奉仕活動もしない、即ち自治権を主張してそれに伴う義務を果たさないでは、ロータリークラブとしての存在価値はありません。
 ロータリー運動は実践哲学であることを忘れてはなりません。

 さて、この原則からは、どんなに素晴らしいボランティア活動であろうとも、RIからクラブやロータリアンにその活動をするように命令することができない理由がお判りになったと思います。


 積極的にボランティア活動をすることを望むロータリアンは多いし、ロータリーのボランティア活動に対するニーズも多い、しかし、現在のロータリーの規約では、理念上からも組織上からも、それを拒んでいるところに、RIのジレンマがあるのではないでしょうか。

 ロータリーの綱領に抵触することなしに、またクラブの自治権を侵すことなく、ボランティア活動をしたいという目的意識を持ったロータリアンが、積極的にボランティア活動に取り組むための新しい発想を提案したいと思います。

 市民や国際社会のニーズに応えるために、人道主義に基づいた積極的なボランティア活動をすることは大切なことです。しかしながら、RIは、これらのボランティア活動を、クラブやロータリアン個人に強制することはできません。何故ならば、奉仕活動の実践はクラブの自治権の範疇に入っており、さらに、RIの権限はクラブに及んだとしてもロータリアン個人には及ばないからです。
 従って、RIが本来の目的である職業奉仕をないがしろにしているとか、クラブの自治権を無視して、ボランティア活動を押し付けているといった誤解を与えない方法で、ボランティア活動を積極的に推し進める方法を開発する必要があります。

 デブリン会長は主要な実践活動に対して20のタスク・フォースを作り、そのスタッフを任命しました。しかしながらこの集団は1000名ほどの指導者集団として、問題意識の提起はできたとしても、実際に活動するマンパワーを確保する力を持っていません。指導者層のマンパワーだけで実行できる活動はいいとしても、一般会員の協力が必要なボランティア活動についてはRI会長、コーディネーター、ガバナーとその要請が順送りに伝えられたとしても、ガバナーがクラブに対して強制することが出来ないという、クラブの自治権がネックになって、どんなに素晴らしい発想であっても、そのアイディアが指導者の間を空回りするだけで、現実の活動にはつながってきません。
 さらに、地区が重点を置くタスク・フォースは、せいぜい二つか三つですから、自分の地区が関心を示さない活動に関しては、ロータリアン個人がこれに参加する道は、事実上閉ざされているわけです。

 一方、ロータリーの正式にプログラムの中にRRVF趣味職業別親睦活動があります。その名の通り、ロータリアンが趣味や職業を通じて親睦を図る同好会組織であり、誰でも任意に加入することができます。
 しかし現状では同好会という性格が強いことと、会の運営はすべてを会費でまかなうように定められている関係上、RRVFが対外的なボランティア活動をすることは困難です。

 私の提案は、この両者の特徴を生かした新しいボランティア組織 Rotary Volunteer Fellowship RVFが出来ないかということです。Task Forceは特定の目的を持って任命された指導者集団であり、RRVFは趣味職業別の一般会員が自発的に参加できる親睦組織です。

 RVFは特定の分野のボランティア活動をしたいというロータリアンが自発的に集まった組織ですから、Collectively Individual Service 集団的個人奉仕というロータリーの原則に合致し、さらに全世界から、ボランティア活動に関心のある会員を目的別に集めることができます。
 RVFは、RRVFと同様にRIのプログラムとして設立した組織で、すべてのボランティア活動は、このRVFを通じて行いますから、RIや地区そのものがボランティア実践活動の母体になるという非難を回避できると共に、クラブの自治権を侵すこともありません。

 その詳細は次の通りです。
1. 会員・・・特定のボランティア活動に関連した全職種およびその活動に関心を抱く全てのロータリアン。たとえばEye Care Volunteer Fellowshipならば、眼科医、眼鏡、コンタクトレンズ、パラメディカル、薬剤師、ケア・マネージャー、医療器具に関連する職種は当然として、介護補助、輸送、通訳等のボランティアとして参加する意思のある者全ての者が参加することができます。
2. 募集方法・・・決して強制であってはならず、あくまで個人の自発的登録としますが、目的意識を持ってロータリアンになったからには、どれか一つのVolunteer Fellowshipに入ってもらう位のつもりで、数多くのVolunteer Fellowshipを設立して、あらゆる手段を使って積極的に会員を募集すべきでしょう。RIや地区やクラブが会員募集に積極的に関与することは問題ないと思います。
3. 組織・・・RIの正式なプログラムとしてそれぞれのRVFを認定します。各RVFについて、委員長・副委員長・エリアmanager・国別のBranch managerが必要でしょう。幾つかのボランティア活動については、現在のタスク・フォースやRRVFから再編成することも可能です。
4. 費用・・・国際的活動についてはロータリー財団からの支出、国内活動についてはCAPのようなシステムを開発する必要があります。それぞれのRVFの趣旨に賛同した、全世界のロータリアンからの寄付RVF Fundをこれに加えることもできます。また、実際に出務するロータリアンに関しては、ロータリー・ボランティアースのような実費支給を考える必要があるかも知れません。
5. 適用・・・現在ロータリーが行っているあらゆる分野のボランティア活動に適用でき、実戦部隊としての活動が可能となります。RVFとして一元化するのも一つの方法ですが、細分化した組織の方が、会員の負担を軽減でき、より専門化でき、小回りが効くのではないかと思います。Eye Care、Relief Rescue (Earthquake, Fire, Flood damage, Traffic, etc.)、Literacy等あらゆる職業別、機能別のRVFを編成することができます。

 効果
1. ボランティア専門集団としての広範囲かつ専門的な活動が期待できる。
2. 広く全世界のローリアンの参加が可能になる。
3. 目的意識を持ったロータリアンが直接参加するので、奉仕活動を強制することにはならない。
4. RI、クラブ共にこの活動の母体ではないので、規約に抵触したりクラブの自治権を犯すことがない。
5. ロータリーの職業分類制度を、ボランティア活動に有効利用することができる。
6. 既存のタスク・フォースおよびRRVFの幾つかを、直ちにこのRVFに再編成することができる。