1973年にアメリカのニュージャージーで生まれたステファン・クレーンという詩人がいます。娼婦を詠った退廃的な詩が多く、アメリカよりもむしるイギリスでその才能をもてはやされた詩人ですが、彼の作品の中に、I
saw a manという詩があります。
地平線を追いかけて
何処までも走りつづける男に出会った。
これを見て心配になり、
彼に声をかけた。
「それは無駄なこと」
「それは不可能なこと」、私は言った。
「そんなことはない」、彼は叫んだ。
そしてまた、走り続けた。
1933年に、シカゴ大学社会科学調査委員会はシカゴ・クラブの委託を受けて、「ROTARY?」という調査報告書を発行しました(本ホームページの翻訳文献に収録しています)。調査委員会は「ROTARY?」の巻頭にこの詩を引用しています。ロータリアンが夢を追いつづけて活動をしている様を、不可能なことに挑戦する無謀な集団と批判したかったのかも知れませんし、敢えて、不可能に挑戦するロータリアンに賛辞を贈ったのかも知れません。
私たちが描いている夢は、実現不可能な夢なのでしょうか。私は決してそうは思いません。ロータリアンは夢追い人の集団であり、クラブは夢を追う人に更に大きな夢を与えるホーム・グランドです。
戦争のない恒久の平和を夢見て、世界中の国が理解を深めるために努力するロータリアン。貧困や飢餓や疾病をなくすことを夢見て、WCSの活動に奔走するロータリアン。次世代を担う子供たちにとって素晴らしい未来を残すことを夢見るロータリアン。
それぞれ夢見る内容は異なっても、利他の心からでたボランタリズムに基づく善意の発想であることには間違いありません。そしてその夢を実現させる原動力は、親睦を前提としたクラブ・ライフから生まれ、その資金は、職業奉仕の実践によって、すべての事業の職業倫理を高めながら自分の事業を発展させていくことで得られるとするならば、まさに、ロータリアン冥利に尽きる話ではないでしょうか。
夢が必ず実現することを信じて、ロータリー運動における、理念と実践の双方を大切に守りながら、生涯学習の場としてロータリー・ライフを楽しんでいきたいものです。
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